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card
Level.4(後編)
 
二十一枚目
砂がカードだと言われても……
「どうしろっていうのよ」
「だから、カードに戻してほしいんだよ」
バカじゃないの、と頭を抱える。
足下に広がる砂。それがカードの変化した姿だとこの少年は言う。
「商人に珍しいカードだって言われて買ったけど、言うことを聞いてくれなかったんだ。どんな道具になるのか楽しみにしてたのに家でポケットから取り出した瞬間砂になって壁を上って行ったんだよ」
騙されたんだ。と少年はいらだちを見せる。
 
屋根裏から動きそうもないネーロの姿に引き受けるしかないことを覚悟する。
しかし、カードに戻すにはどうすればいいのだろう。
 
 
一番に思いつくのは、戻れと念じること。
でもそれは自分の持ってるカードの話だと思う。
次に思いつくのはフェイクを倒すこと。
しかし相手が砂の形じゃ武器は使えない。
 
 
もうアケオロスに任せてみるか、とカードを出そうとしたときに、ライナが口を開いた。
「で、戻れと念じてみたわけ?」
少年は肯定を示す。
「今の所有者は誰?」
「ボクのはずなんだけど」
「じゃあいいわ、ダメもとで受け渡しやりましょ。ストーム、砂上に手をついて」
何を始める気だと聞く間もなく、手を取られ無理矢理四つん這いの姿勢になる。
「ストームさんにこのカードあげます」
少年も同じように砂に手をついていた。
床に言い聞かせるように、その言葉はストームの方ではなく下を向いて告げられていた。
 
「どういう、こと?」
砂を払いながら立ち上がる。
いきなりカードをあげると言われても、どうしろというのだ。
 
横でじっと見ていたライナはそんなことだろうと思っていたとため息をついた。
「カードは名前を書いた"支配者"の他に"所有者"にも逆らうことをしないの」
支配者とはカードを手に入れたときに名前を書くカードキーパーのことだろう。
「所有者って何?」
「カードキーパーからカードをもらった人って言えばわかる?支配者とは別に、現在カードを持っていて、カードを使う人」
「よくわからない」
大げさに肩を落とす振りをして続けた。
「今あたしカード使ってるでしょ?」
カードを取り出すと、前回姿を見た例の槍が現れた。
「だけどあたしは支配者じゃない。わかる?」
槍を消して、カードを差し出してきた。
書かれているアルファベットは、赤文字。ということは本当の支配者は属性が火の人物。
ライナは金髪なので雷のはずだ。
「今のところは」
「じゃぁ、あたしは支配者じゃないけど、このカードはあたしの思い通り形を変える」
そういえば、確かに。
ライナが一般人でもカードを使えていた理屈がやっと理解できた。
 
 
「で、今このカードの所有者はストーム、あなたよ」
「そうなの?」
「そうなの。カードに一緒に触れながら「あげる」とか「くれる」とか言えばいいの」
わぁ、なんて簡単なんだろう。
「とりあえず、戻れって言ってくれる?」
本当に戻るのか怪しいが、とりあえずやってみる。
 
 
戻って……
 
ん?戻ってよ。
 
戻って頂戴。
 
戻ってよー
 
 
 
「駄目みたいね」
ライナはやっぱり。と腕を組む。
「さっきの説明だったら、できるはずじゃないの?」
白い目で見るしかない。
「それは、本当にこの子が所有者だった場合の話。今の所有者はぜんぜん別人というわけね」
諦めなさいとライナは屋根裏の出口へと歩きだそうとした。
「駄目なんだよ。早く出ていってもらわないと……放っておいたらまたあいつが巨大化しちゃう」
 
ほう、今何と?
 
「このカード、近くにいるフェイクに寄生するらしいんだ」
 
 
 
 
少年が泣き始めてしまったので、作戦を立てることとツチグモについての報告を兼ねて一度ビアンカの部屋へと戻ることにした。
 
 
「それは、災難でしたね」
穏やかそうに眠る少女の側で、ベッドの端に浅く腰掛ける男は端のたれた目で応ずる。
 
ビアンカがあんな状態になっていたのは、一時的に力が足りなくなって体の制御が利かなくなったからだとカーヴォロは説明した。
ただでさえ巨大化したツチグモが大量の力を奪うのに、カーヴォロが処方した“力を発散させる薬”が働いてしまった。それが原因だという。
 
「召喚を解除して休めば、すぐによくなります。現に今……」
こうして穏やかに眠っています。と少女の豊かな髪をなでる。
「やはりあなた達に頼んで正解でした」
柔らかい笑みを見ていると、こちらの思考も停止するところだった。
 
 
 
 
「でも、このままじゃまたツチグモが言うことをきかなくなるでしょ?」
「そういうわけでもないと思いますけど」
ライナの言葉に尻すぼみな返事。
その返事は彼女に勢いをつけさせたようだ。
「それにね、所有者がわからないカードは危ないわ。遠くから操作されたらたまらないでしょ」
「そうですね」
「それに盗品だったらどうするわけ?カードの状態ならともかく、あれじゃどうしようもないわ」
そのイライラした態度にどうしましょうかとカーヴォロは穏やかに対応する。
 
 
 
 
 
 
 
 
盗品……
そういえば、白い部屋の人は盗みも認めるって言ってた気がするけど。
 
「盗品だった場合どうするんの?警察に届ける?」
はぁ?と苛立ったライナに怒りの矛先を向けられそうになった。
「ケイサツ?城のこと?」
こりゃ驚いた。警察ときいたら城ときたぜ。
「城って、あの白い場所?フェイクで行く」
「そうよ。盗品はカードの状態で城へ持っていくのよ。手続きが完了すれば自分のものになるわ」
なんだこの盗みは裁きを受けるような悪いことじゃないっていうノリは。
 
 
 
隣で泣きじゃくる少年を慰めようとしゃがんでみる。
「俺……ちゃんと、商人が……使うとこ、見ておけば……良かった」
今のところ悪者はネーロ君にカードを渡した商人というところだろう。
 
 
 
 
 
 
「で、どうするの?」
カーヴォロは小さく唸った後、提案を出した。
「カードから砂になったのはフェイクの意志みたいですし、適当にちょっかいかけて襲ってきたところを倒しましょうか」
結局そうなるわけね。
「引き受けてくださいますか?ストームさん」
 
自分でできないことを提案するのは控えた方がいいよ。
でもま、断ることはできそうもないけど……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
夕方も過ぎて、ただでさえ真っ暗に近かった屋根裏は射し込む光がなくなっていた。
今度は初めからランプを持っていく。
 
確か、砂が撒かれていたのは主に部屋の真ん中。
三人の大人がぞろぞろ歩く。
少年少女は下の部屋でお留守番だ。
 
 
 
「あ、ちなみに僕はフェイクキーパーなので申し訳程度にですがお役に立ちますよ」
静かな闇に柔らかい声が満ちた。
ふんと機嫌悪そうなライナの声も聞こえてきた。
本当にこの二人は……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
問題の砂場はすぐに見つかった。
全くといって動くような気配がない。
「これがその、フェイクなんですかね?」
疑っている様子が声から伝わってくる。
「あの子の話じゃ、そうなんでしょ?ストーム、適当に何かしてみてくれる?」
そんな無責任な……
 
二十二枚目
 
 
とりあえず、フェイクに寄生するとか言ってたからフェイクを出してみることにする。
「ジェル!!」
薄黄色に光る透明な物体が、ブルンと音を立てて着地した。
それは最初、砂上で左右に震えていただけだったが、いきなり床に沈み込むように体勢を低くし、床一面を覆うように広がりだした。
 
 
 
 
「うわ、気持ち悪っ」
足に触れた感触が悪かったのか、ライナは飛び上がった。
「ほらキャベツ、背中におぶりなさい」
何なのかわからないが、ライナは男の背中に回り、飛び乗った。
 
そこまで嫌か。
そしてカーヴォロ、お前はなにも文句を言わないのか。
 
 
柔らかい笑顔のままライナをおぶるカーヴォロの姿ははっきり言って保護者とその子供だ。
平和な奴ら。と心中でごちる。
 
 
 
 
ところで、床に広がったジェルの方だが。
伸びる、まだ伸びる。ずっと伸びていく。
光を発するジェルが床一面に広がるのだから屋根裏は明るくなっていく。
光の川に足をつっこんでいるみたいだ。不思議な気分。
 
高さはストームの足首より少し上まである。洪水を思い出して正直不安になる。
後、動かれると冷たい感触が気持ち悪い。
 
 
 
 
 
しかしいつまでもこうしているわけにもいかない。
勇気を振り絞って、ジェルの中へ手を突っ込んだ。
寒天にスプーンをつっこむよりなめらか、ナタデココに歯を立てるより柔らかく、ジェルは穏やかに裂け、ストームの手は地面についた。
まさぐるように指を動かしてみる。
砂上特有のざらざらとした感触はない。
 
 
 
 
砂が、消えている。
 
 
 
 
 
 
 
ジェルが光をまとうせいで気がつかなかったが砂場の姿がない。
伸びていくジェルに流されてしまったのか。
 
 
「ライナ。カーヴォロさん」
遠くの方をみていた二人がこちらに注意を向けた。
 
「砂がいません」
 
 
カーヴォロはザボザボと歩いてこちらに来る。
上に乗るライナも少々心配そうだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
で、ころぶアホがいる。
 
「ちょっと、大丈夫?」
顔面からジェルの川にはまった。
上に乗る無事なライナが心配する。
 
ライナを下から支えていた手をゆっくり放して地面につき、顔を上げて深呼吸。
背中に人を乗せた男は、四つん這いのまま笑顔を見せる。
「いえ、ちょっとびっくりしましたね」
なんだこいつ、びっくりしたのはこっちだよ。
ライナを背中に乗せたままで、眼鏡についたジェルの破片を服の裾で拭いながら立ち上がる。
 
「駄目ですね。最近運動不足で……」
「昔っからしょっちゅうすっころんでたと思うけど?」
上から小さな笑い声が聞こえる。
下の男は顔を赤らめることもせずに、そうでしたっけとにこにこ顔。
何だ、ただの運動音痴のドジっこか。
 
 
 
 
 
 
「よく見えませんね」
ライナをおぶりながら上手にかがんで床を見る。
「だけど、床を触ってみると砂の感触がないですよ」
砂の感触……と繰り返して、男は袖をまくるとジェルの中に手を突っ込んだ。
「確かに、そうですね。床の上には無いと思います。ですが……」
体を起こそうとしたのだが、ちょうどそのときライナがジェルに触ろうと身を乗り出したのでそのままダイブ。
「ライナ、邪魔しないでください」
「うるさいわね」
今度は二人とも半透明の光の粒をかぶっていた。
 
 
 
 
 
 
 
ジェルの量はとどまることを知らない。
先ほどまでは足首ほどだと思っていたがいつの間にやらふくらはぎにまとわりついていた。
 
 
これ、どうしよう。
 
屋根裏への扉は閉めてきたからジェルが部屋に落ちる事はないだろう。
だから、屋根裏への扉を今開けることはできない。
要は閉じこめられている訳なんだよね。
 
 
「いったんカードに戻すよ?」
「お願いします」
女にしがみつかれながら、カーヴォロは疲れた様子を見せていた。
 
 
戻って、くれない?
 
 
 
あー。だめだこりゃ
 
「ジェルー」
名前を呼んでみても駄目だ。
これは、まずいぞ。
 
「駄目みたい……」
小声で呟くと怒りのこもったまなざしを斜め上から受けた。
「駄目って、どうするのよこれ」
下を指さす。
液の深さはもう膝丈だ。
「一度倒すしかないね。さっきの蜘蛛みたいに」
自分に言い聞かせるように呟いた。
 
アケオロスを召喚する。
大きな蛇の体は光の上でワンバウンド。
「面白いとか思ってたら、怒るよ」
体制をなおした蛇は尻尾をしなやかに一つ振った。
「砂のフェイクに寄生されたらしくって、ジェルが巨大化しちゃったんだけど。どうにかなる?」
高いところにあった蛇の仮面がストームの目の高さまで下がる。
 
 
仮面の中から見えた金色の目がじっと見据える。
“ご主人、そんな相手がいるところでの召喚は禁物だ”
 
満月に墨で落書きしたような、まん丸の目に一筋縦に入った黒線。
その瞳は怒りを湛えていた。
返答によってはお前を殺してやろうかと青白い牙が煌めく。
 
「ご、めんなさい」
体がすくむのを感じながら、それだけの言葉を絞り出した。
「どうすればいいか、わからなかったから、あなたを呼んだ」
鼻で笑ったのか鼻先を少し上げてから、蛇はまた元のように高い位置へと仮面を戻した。
“それなら他のカードの後に私を召喚したのは正解だったな”
蛇は輝く柔らかい床を見下ろした。
 
 
 
先ほど尻尾を振った際、はずみ沈んだのか、尾だけは光の中だ。
もう光の泉はストームの太股を飲み込んでいた。
 
 
 
 
“ご主人、よく聞け”
声というよりは頭に文字がよぎる感覚。穏やかな流れ。
“何にかまわず、寄生するといえばジンの類だ。こいつはフェイクに寄生するのだな”
肯定を示すため、目をそらさないまま首を小さく縦に振る。
“砂の形をとるなら相手を倒すのは無理だ”
「どうすればいい?」
“まずは寄生されたカードを潰すこと。話はそれからだ”
いいながら蛇はジェルの中へ首を突っ込んだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ジェルという名のフェイク、本体はブヨブヨの中にある丸い核だそうだ。
あまりに小さいので近づいて目をこらさないと見つからない。
カードを手に入れるとき、教えてもらった。
「フェイクにはそれぞれ弱点となるポイントがある。それを上手く突けばフェイクとして実体を保つことができなくなるらしい」
だがこれは裏技だ。誰にでもできる訳じゃない。とあの人は思い詰めた顔をした。
どうやら短期間でも肝心なところは教えてもらっていたらしい。
「ポイントがどうしてもわからないときはこちらもフェイクを召喚すればいい」
一言言えば、ピンポイントで狙い始める。
 
 
 
 
 
 
 
 
蛇は水中を泳ぐように中途半端に固まった光の波間を進む。
そして一瞬、部屋の蛍光灯がすべて灯ったときのように、屋根裏から闇が消えた。
 
 
 
 
また闇が支配を広げたとき、近くの光は人間が持つカンテラに入った小さな三つの灯火だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「やったじゃないストーム」
カーヴォロの背中からひょいと降りたライナから、上機嫌な声がかけられた。
「ジェルだけだよ、まだ何も解決できてない」
アケオロスが消えた方へとストームは走り出した。
 
「かわいくないわね」
少しの間興ざめのような顔をしていた女もカーヴォロになだめられてストームを追った。
 
 
 
 
“戻してくれ。早く”
アケオロスの言葉。
「戻ってアケオロス」
叫ぶと青白い光が手元に集まり始めた。
“貴奴を戻したいなら、すべての粒を狭い箱にでも閉じこめればいい。怒って形作るはずだ”
光が収まる前に、最後の助言が脳内を巡った。
「ありがとう、ご苦労様」
青白い蛇の書かれた黒いカードに向かって感謝を示す。
手放すとカードは宙に消えた。
 
 
 
 
 
少し歩いたところで、またツチグモを倒したときのように砂場ができていた。
砂上には[STORM]と書かれた一枚のカードが落ちている。
 
 
 
 
 
 
 
 
「また戻ってしまいましたね」
芯が燃えきり、消えかけた明かりを頼りに二人は遅れてストームの元へと追いついた。
カーヴォロは顎に手を当てて考え込む動作をしている。
 
「カーヴォロさん、小さい入れ物とかありますか?」
丸くさせた目を上げて、小瓶なら下にありますがとよくわかっていない様子を見せる。
そんな男に笑顔で報告をしてやることにした。
「解決策、わかりましたよ」
 
二十三枚目
 
一度部屋へ降りて、明かり用のろうそくと栄養ドリンクの入ってそうな茶色の小瓶を調達した後また元の砂場へと戻ってきた。
 
 
初めのうちは一掬い一掬い丁寧に砂集めをやったが、だんだん面倒くさくなってきた。
そんなタイミングで、ライナが小瓶を倒す。
 
「あーもー、何してるの」
「悪かったわね、怒鳴らないでよ」
倒した瓶を立て直し、両手で砂を掬うと大ざっぱに入れていく。
瓶の口に全て入るわけもなく、多くははみ出て瓶を包むように山を作る。
「乱暴者」
「うるさい」
一粒残らずと言っていたが、これは無理だろ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
あらかた掬えたと思うが、床の上に散らばった残り少ない砂を集めるのは至難の業だ。
指を押しつけ、ついてくる砂を小瓶に放り込むが、きりがない。
 
 
 
そんな中、カーヴォロは一枚のカードをポケットから取り出した。
暗がりで何のカードかはわからない。
どうするのかと思いきや、両端を持って砂を掬い始めた。
 
あぁ、その方法があったか。
真似をしてカードを使いながら三人は黙々と作業を続けた。
 
小さな明かりで手元を照らしながら少しずつ集めていく。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「これで全部ですか」
カーヴォロが確認しながら瓶の蓋を閉める。
瓶の口が細くなっていく辺りで、目につく砂は全て入ったようだ。
労力は相当消費した。
 
 
「あー疲れた。お腹空いたー」
今日一日働きましたと言わんばかりに、ライナは文句を垂れる。
そうですねとカーヴォロも柔らかく同意。
私だって疲れたよ。
 
ずっと召喚してたし
ジェルが巨大化するし
アケオロスが怒ったし
すごく怖かったし
 
 
 うん、アケオロスが怖かった。
 
 
 心中で一人ごちながら、屋根裏から撤退する。
 
 
 
 
 
 
部屋に降りると、起きていたビアンカがベッドに腰を掛け、笑顔で迎えてくれた。
「もう大丈夫そうですね」
カーヴォロは少女にある程度近づいて、しゃがみ込んだ。
「ビアンカ、もう苦しくないよ」
子供特有の豊かに響く声が明るさを伝えた。
 
 
 
火の明かりでぼんやりと浮かび上がる室内。
テーブルの上のお洒落な蝋燭立てがその白いテーブルクロスを美しく照らす。
「センセ、終わった?」
ちょうど下の階から上がってきたネーロの手には鍋があった。
なにやら熱そうで、蒸気穴から湯気が立っている。
「終わりましたよ。砂については、後で僕たちで始末しておきます」
それならよかったと、少年は小さい笑みを浮かべた。
「ご飯用意したから食べてってよ」
重たそうに鍋をテーブルの上に乗せ、積んであった皿を置き始める。
「なかなか、気が利くじゃない」
にっこりとほほえむライナ。あなたはそれしかないのだろうか。
 
「でも、一度外で体払ってよ。汚いから」
失礼な奴だと思いながら、屋根裏を動き回っていた事を考えればそれも正論なので苦笑を浮かべる。
 
「でも、それなら君も一度払った方がいいね」
君も屋根裏行ったでしょ?と言いながら頭をなでる。
するとバラバラと何かがこぼれた音がした。
 
 
いやな予感がする。
 
 
「ストーム、これって」
確認のための言葉だと思うが、確認したくないという思いが内包されている。
私だって確認したくないよ。でもさ、
「一応拾っておこうか」
火を近づけてよく見ると、やっぱり、砂だった。
「ネーロ君。やっぱり君、体を払った方がいいよ。できるだけ風が無くて、床が平らなところで」
拾うのもなかなか面倒くさいんだから。
 
 
えー。と少年は不服そうに呟きながらもきちんとついてきた。
 
後ろで君の妹がクスクスと笑っていたよ。
 
 
砂がついていたのはネーロ君だけではなかった。
四人ともとりあえず払える分だけ払って、集まる分だけ集めてみた。
 
一粒も残さずというのは、無理だよ。
 
 
その辺はちょっとオマケしてもらえないかなと思いながら砂の瓶はカーヴォロに預けておいた。
後で始末するといいだした本人に始末してもらおうじゃないか。
 
 
 
 
「けど、本当にこれでいいわけ?」
ライナは眉間にしわを寄せて男の持つ瓶を凝視する。
「閉じこめた後、たぶん暴れて襲いかかってくるからそれを倒せばいいって」
「また戦うの?」
付き合いたくないと片手を振った。
「このまま閉じこめておいたらそれで解決。もういいじゃん」
ライナ、砂を集める前と言ってたことがなんか違う。
「カードにして城に持っていくって言ったのライナでしょ」
「そうだけどさー」
戦闘馬鹿だと思っていたがちょっと違うようだ。
疲れているときは疲れているのだろう。
「捕まえたからといって、すぐ現れるわけでもないでしょうし、今晩はゆっくりしてください」
カーヴォロがフォローに回った。
 
確かに、今日は疲れた。
今は待つだけだから、気楽に構えていても罰は当たらないだろう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
晩餐がすむと、三人は少女たちの家を出た。
城の周辺。森の中には小さい広場があってそれを囲むように民家が数件建っているのだが、どれもでかい。
「避暑地として人気ですからね」
カーヴォロは何気なく答えた。
金持ちの別荘というところか……
 
その中に軒を連ねているのだから、ビアンカの家はきっと金持ちなのだろう。という考えに行き着いた。
 
二十四枚目
夜が明ける前
簡易宿に泊まっていたストームの耳に廊下を走る慌てた足音が聞こえた。
 
足音はストームが泊まる部屋の前で止まり、扉の開く音の後、息を切らせた何者かの進入を告げた。
暗くてよくわからなかったが、月光の薄明かりに照らされたテンパ頭からカーヴォロと勝手に断定。
「何かあったんですかー、こんな時間に」
眠り足りない眼をこすりながら、ライナはそっちですよと指さしたところ、男は彼女を起こしにかかる。
 
寝ぼけたライナによる攻撃が何度かあったのだろう。
音が耳に入り、だんだん頭がはっきりしていく。
 
「で、何があったんですか?」
ベッドから降りて、ライナの目覚ましを手伝ってやる。
「変な生き物が現れたそうです。ビアンカの家で」
で、助けが欲しいと?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
変な生き物というのは、たぶんフェイクだ。
しかしビアンカの家ということは奇妙だ。
野生のフェイクというのは人の家には入ろうとしないらしい。
ほとんどは例え人を襲おうとしていた奴でも、扉の前であきらめて帰るそうだ。
 
で、加えて今日の騒ぎもある。
ひょっとすると、砂が全部集まってなかったせいかな?
それが候補としては一番正しい気がした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「うわ、本当に変な奴ね」
ずっと寝ぼけた目をしていたライナも驚きのあまり眠気を吹き飛ばしたようだ。
 
ビアンカ宅の一階。
ネーロ君のベッドの上になにやら妖しい光がある。
近づいてみると顔がある。体がある。腕もある。でも下半身は途中までしか無い。
立派なあごひげに、たくましい筋肉。薄い髪の毛。
有名な童話のアニメで見たことあるような魔神の姿。
 
「おれ、こんなおっさんがいたら怖くて眠れる気がしないんだよ。どっかやってよー」
少年、なかなか弱虫だな。
いや、私だって怖いけど。
 
 
だがとりあえずフェイクだろうという事はわかる。
幽霊とかそういうのではないよね。
 
 
 
 
「何してるの?」
騒いでいたせいか、二階からビアンカが降りてきた。
おぼつかない足取りでゆっくり一段一段降りてくる。
「起きちゃったのかよ。ごめんな、兄ちゃん達騒いでたから」
少年は慌ててビアンカを迎えにいく。
少女にはちょっと階段が大きすぎるようだ。
 
 
 
「うわあ。おじさん、誰?」
目を輝かせながら、小さいおっさんに訪ねる。
茶色いおっさんはゆっくりと目を開けた。
「おじさんフェイクなの?そっかー」
キャハッと笑い声をたてる。
「でもおじさん、そこはネーロ君の場所だよ。おじさんがとっちゃ駄目でしょ?ん。おじさんその場所から動けないの?」
 
 
 
これは、どういうことだろう。
ビアンカが、一人で会話してる……
 
「ビアンカ、この……おじさんと話ができますか?」
カーヴォロが真剣に訪ねている。
「できるよ!」
あ、それで一人で喋っていたんだ。
「じゃあ、僕はおじさんと話がしたいんだけどおじさんの声が聞こえないから通訳してくれるかな?」
「ツウヤク?」
「おじさんが言ったことを僕に言ってほしいんだ」
「カー君おじさんの声、聞こえないの?」
「そうですよ、だからよろしくお願いしますね」
わかった!と少女は笑顔で頷いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
フェイクと話せるというのはこういうことかとカーヴォロと魔神のおじさんとの会話の橋渡ししている少女を見る。
フェイクには人間の言葉がわかっているらしい。
ビアンカはほとんど一方的に魔神の代弁者として言葉を発している。
 
しかし会話をしているのだからフェイク側も声を出すとか鳴くとかしていると思ったらそういう動作は全くない。
ただ、この魔神は人間に似た顔をしているので、話の内容に合わせた表情をしている。
 
 
だが、どう考えてもフェイクとの会話というのは独り言にしか見えないだろうな。
……アケオロスと話すの控えておこ。
 
 
 
 
フェイクの名はサジン。
支配者はこの近くにはいない。
所有者は支配者が兼ねている。
命令を聞かなければならない範囲から外れているので自分の意志で好きなことをしていた。
 
 
「で、勝手に人のフェイクを巨大化させて遊んでいたってわけ?」
「そうだって、おじさんが」
「あんたねー。ちょっと考えなさいよ」
ライナが魔神を叩こうとすると、魔神は一時的に砂になり回避した。
「何こいつ、むかつくー」
ライナにむかつかれたところで魔神にとっては何もないようだ。
小さな魔神は余裕のある笑みに見える表情を浮かべた。
 
 
 
 
しかし、自分はアケオロスの言葉は聞こえるのにこの魔神の言葉は聞こえない。
何故なのだろう。
 
聴こうと思えば聞こえるのではないかと思って、目をつぶって魔神に意識を集中する。
魔神の言動。
何か伝えている。
私にも、言葉を聞かせて。
 
 
 
 
何かに頭を殴られたような感覚が襲いかかってきた。体に力が入らない。
 
支えきれなくて、膝から崩れた。
 
目を開ける。
「ちょ、ちょっと、ストーム?」
隣に立っていたライナが心配そうに腰をかがめて覗き込む。
反射的に頭の中はごめんなさいの文字で埋め尽くされていた。
私には、無理だ。
 
「大丈夫。何でもない」
まだちょっとパニックが残っている。
けれど感じた事としては、私は今、話を聞くべきではないって事。
 
おとなしくビアンカとカーヴォロの話を聞いておこう。
 
 
 
 
 
 
カーヴォロは魔神をカードに戻そうと説得している。
一方魔神はそれを聞き入れそうにはなかった。
「支配下に置かれるのはもう嫌だって。おじさんの持ち主は全然魔神さんを召喚してくれなかったから退屈だったって」
対するカーヴォロは渋い顔をしている。
 
「なんか、気持ち悪いよね」
ライナはストームだけに聞こえるぐらいの小さな声でつぶやいた。
「あたしはさ、フェイクは誰かの支配下にないと何しでかすかわからない危険なモノとしか考えなかったわ」
「それが、どうかしたの?」
眉間にしわを寄せながら、酷く思い詰めた顔をしている。
「話ができると、やっぱりそういうのってちょっと違う気がして……べ、別に同情とかそういうのじゃないと思うんだけど」
 
フェイクは、ただの獣じゃない。
 
彼女はそう思い始めたのかもしれない。
確かに私は初めからアケオロスに意志があることを何となく感じていたけど、ライナにとっては……一般人にとってはそう気づくことではないのかもしれない。
「知らなきゃ良かったって思ってるの?」
力なく女は頷いた。
「この魔神さん、結構おしゃべりみたいだしね」
今だけ通じるからよくしゃべるんだろうけれど……
 
 
 
説得、上手くいくのだろうか。
横から聞いている限りでは、水掛け論というわけでもなさそうだ。
時間を掛けて、どういう方向に落ち着くのか眺めてみたい気持ちになった。
 
二十五枚目
無事に魔神はカードに戻った。
そして、私達は魔神の持ち出した条件を満たすため白い城へと向かっている。
 
 
魔神の持ち出した条件。
それは単純明快だった。
“少しでも長く召喚をすること”
ビアンカは今までツチグモを召喚していた。
これからは土属性であるサジンを召喚することになるだろう。
その為には、ビアンカが支配者にならなくてはならない。
 
 
いつも入る白い部屋は一階ホールを左に進む。
ところが今回は白い部屋が目的ではないので、正面階段を上がって右上がりの階段へ。
踊り場を通って、結局真ん中。
右上がりの階段を選ぼうが左上がりの階段を選ぼうが結局つくところは同じらしい。
 
どういう作りかわからないが、今更ながら内部も立派な城なんだと気づく。
 
といっても、装飾は赤い絨毯の他には特に目立ったものはないのだが……
 
上の階へ行くと一番奥の壁にあったステンドグラスの輝きが目に入った。
人が獣を手懐ける姿が描かれている。
 
部屋には一人用のカウンターが並んでいた。
白い室内に、茶色のカウンターが両端に二つずつ。と一番奥に一つ。
カウンターの間には扉が一つあって、一番奥のカウンターの両端では壁が口を開けている。
日光が入ってくるので中庭にでられるのかもしれない。
 
カウンターに人が一人ずつ立っている。
一行は一番手前のカウンターに寄った。
 
「うわ」
思わず呟きがこぼれた。
カウンターに立っていたのは、目だけ穴のあけられた奇妙な仮面をした人。
左目の下に入った、青い滴の絵が涙のようにも見える。
青い燕尾服に深い青の気持ち長い髪。
私が水を司っているという意思表示。
その為なら全身同じ色でもダサいとは思わないらしい。
 
 
 
「支配者を変えていただきたいのですが」
カーヴォロが魔神のカードを差し出した。
「どなたが新しい支配者ですか?」
少年に抱かれたビアンカが私だよと手を挙げる。
「わかりました」
司水はカードの上に手をかざす。
マジシャンがやるようにかざした手を左右に振り、また落ち着いて真上にかざした。
 
書かれていた黒色の文字は水色へと変色し、浮かび上がると司水の手の中に吸い込まれていった。
 
「どうぞ、お名前をお書きください」
司水はカードを差し出す。
ビアンカにはカウンターが大きすぎるので、カーヴォロにちょうどいい高さになるように抱いてもらいながら、短い黄色の文章を書き込んだ。
「お疲れさまでした。これでこのカードはあなたのものです」
司水は体制を変えることなく、マニュアル通りだというような棒読みで仕事を終えた。
 
「えへへービアンカのカードだよ」
少女はカーヴォロの手から放れるとうれしそうに兄の元へと走り出した。
 
 
 
「あ、そうだ、こっちもお願いします」
ストームが出したのはいつかの毒ガエル。
金色の文字が前の持ち主を指名している。
「どなたが新しい支配者ですか?」
「私です」
「わかりました」
ビアンカの時と声色一つ、何一つ変わらない。
やってることがやってることなので、わざとそうしているのかもしれないが、少々不快だ。
「どうぞ、お名前をお書きください」
まっさらなカードにこの世界での名前を書く。
「お疲れさまでした。これでこのカードはあなたのものです」
 
受け取って、カードケースにしまおうとしたところで司水が止めた。
「そのカードは少々傷んでおります。傷がひどくなる前にもしよろしければ、隣のカウンターへお持ちください」
いいながら奥のカウンターを指さす。
向こうには赤いドレスを着た人がいる。
どうすればいいのか困っているとカーヴォロが行ってきなさいと肩をたたいた。
「行っておいた方がいいですよ、傷がひどいとカードを使うことができませんし」
はぁ、と答えてから司水の方へ向き直る。
「……ご親切にどうも」
向こうが無表情だからか、自分も無表情な声になってしまう。
会釈をすると、隣のカウンターへ進んだ。
 
 
 
 
 
「ようこそ!このカウンターに来たってことはカードの修復かなッ?」
胸元をさらす赤いイブニングドレス。燃えるような赤いショートヘアー。
先ほどの人を司水と呼ぶとしたら、こっちは司火とでもいうのだろう。
それにしても司水とは大違いのテンションである。
共通のところといえば、やはり目だけが開いた仮面だろう。
右目には太陽があしらわれている。
 
 
「ふむふむ。イペリットさんだねッ。まッかせなさい!」
イペリットというのは毒ガエルの名前だろう。言われても、そうと読めそうにはない。
 
カードの修復は司水と全く同じ動きで行われた。
綺麗になったカードは確かに傷無し。新品。
 
「大事に扱ってあげてねッ」
来たときと同じようにハイテンションな声で見送られた。
 
 
しかし、対応の温度差でちょっと頭がぼーっとする。
 
 
 
 
もう一度部屋を見回す。
一番奥にはステンドグラス。その下に緑モーニングなアスパラガスのカウンター。
右側にはさっきの火と水のカウンター。
左側奥には胸のきつそうな金色ドレスな金髪。手前は何処のエージェントだと疑う喪服姿の角刈り。
 
本当に、変な部屋だ。
 
 
「そういえば、ストームさん記憶喪失でしたっけ」
物珍しげに眺めていると、カーヴォロが横から声をかけた。
そういえば、そんな設定もあった。
「あれ、私言いましたっけ?」
「ライナに聞いたんです」
なるほどーとライナを探す。
「ライナは二人と一緒に帰りましたよ」
なんと、置いてきぼりか!
「すいません、私がぼーっとしていたから」
カーヴォロが留まっているのが自分のせいだと反省する。
ところが男は責める様子もなくいえいえと笑顔で返事をする。
「この部屋が気になるのなら、説明しましょうか?」
「あ、じゃあ、お願いします」
男の厚意に甘えることにした。
 
 
 
 
 
 
まず初めに行った青い人のところは"所有者更新"専門。
ここで多くの盗品や所有者不明のカードの名前が書き換えられますね。
カードを盗まれたカードキーパーがたまに待ち伏せしていたりしていますが、そのような場合でも青い人に渡してしまえば手を出すことは許されません。
 
「力づくで奪い返せってこと?」
「ちょっと違いますが、この部屋の人は永久中立を約束しますので、依頼内容が全てなんです」
「よくわからない」
「……もめ事は、個人で解決しなさいということですよ」
 
 
 
次に向かった赤い人のところは"カード修復"専門。
うっかり破いてしまっても、ここへ持ってくれば元通り綺麗になります。
例え、ビリビリに破いた後、パーツが全てそろってなくても大丈夫だという話ですよ。
 
「じゃぁ、ちぎった破片を一つずつ持っていけば……」
「いえ、どうやら修復した際にその場にない破片も自ら集まってくるそうです」
「ってことは、誰かがやったんだね」
「もしかすると、そうですね」
 
 
 
一番奥の緑の人のところは"カード廃棄"専門。
持っていたくはないけれど、誰の手にも渡って欲しくないカード等を廃棄する為の場所です。
緑の人に渡されたカードは目の前で細かく破られ、風に乗って中庭へ捨てられてしまいます。
中庭へ行っても、カードは完全に姿を消すため。拾い集めることは不可能です。
だから、よく考えて依頼しないといけません。
 
「そういうのもあるんだ」
「物語などの舞台にもよくでてきます。心中前にここにカードを渡すという場面で」
「縁起でもない……」
 
 
 
 
こちらから見て左手前、黄の人のところは"カード検索"専門。
無くしたカードが何処へ行ったのか、今何処にあるのかを探します。
大抵の場合、すでにカードはこの部屋で支配者が変わっていますが。
 
「それって役に立つの?」
「えぇ、例えばあなたの家の二階にある南向かいの机の上。というようにに細かい場所まで当てていただけるので、元気な人はここまで来て教えてもらっているようです」
「自分で探そうよ、家の中ぐらい」
 
 
 
最後に黒の人のところですが、あそこは"フェイクの回復"を専門にしています。
主に利用者はフェイクキーパーですね。
フェイクは一度カードになれば勝手に傷などは癒えますが、フェイクキーパーの場合、フェイクをカードにまで持っていけませんからここで癒してもらいに来ます。
 
「もしかして、この城がいちいちでかくて広いのはフェイクが通れるため?」
「そういう説もありますね。利用者は主にフェイクキーパーと言いましたがが、黒の人に癒してもらうとフェイクが嬉しそうにするからとカードキーパーにも人気です」
 
へーと感嘆の声が出る。
「まぁ、僕も城については学園都市で習った一般教養に含まれる簡単なことしか知りませんが」
薄い笑いだった。
「私も行ってみようかな」
学園都市に。
「そうですね、あそこはなかなかいい場所ですよ」
上を向いて遠い目。
青春を振り返る感じだ。
「場所を教えてあげましょう。後、必要な事も」
願ってもいない言葉に感謝の念を示し、ビアンカの家へと帰路についた。
 
 
 
To be continued・・・
 
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